スウェーデン語専攻の卒業生に、当時の思い出や学び、卒業後の進路についてインタビュー!
第2回は、2012年度入学の平田大翔さんにインタビューしました。

太字:聞き手(学生)、細字:平田さん
スウェーデン語専攻を選んだきっかけは何ですか?
きっかけは決して誇れるものではなく…(笑)
英語が得意で外国に興味があったのと、あまりメジャーではない言語をやってみたかったため阪大外語が受験する候補に上がりました。その後YouTubeで、阪大外語で学べる専攻語を全て聴いたのは覚えています。スウェーデン語がなんとなく耳触りが良かったのと、「北欧」について知ってることが少なかったので、学んでみたいと思って決めました。
スウェーデン語専攻での思い出を教えてください。
振り返って思い出すのは大きな節目よりも、日々スウェーデンを好きになっていったことです。特に同期に恵まれていたことは今でも常々思っていて、同じような熱量で日々一緒に顔を合わせて話して学ぶのが楽しくて、どんどんとスウェーデンについて知識が深まっていったのを覚えています。
留学をされていたとお聞きしましたが、どのようなところに留学していたのですか?
Hudiksvall (フディクスバル)というStockholmからSJ(スウェーデン国鉄)で2時間半ほど北にある町から、さらにバスで15分ほどの田舎にあるForsa folkhögskola(フォッシャ国民高等学校)に行っていました。森と湖と牧草地に囲まれた学校で、写真のコースに通っていました。
どう写真を撮るかというよりは、与えられた抽象的なお題をどう解釈するか、日々撮り溜めた写真をどの様にまとめて作品にするか、自分が撮る写真にはどういう傾向があるのか、といった思考訓練に近いことをやって日々を過ごしました。自分の写真や制作の意図をスウェーデン語で説明するのはとても難しかったです。




なぜそのフォルクやコースを選んだのですか?
スウェーデン語は何をやってても身につけられるだろうと(安易に)考えていたので、好きなことを学びながらスウェーデン語を身につけようという方針で学校を探しました。音楽科と写真科とで探していくつか出願した中で色よい返事をくれたのがForsaでした。
この様に考えていたので場所や地域にこだわりはありませんでしたが、自然がすぐ近くにある場所で、小さいですが街が近くにあって、良い場所だったと思います。
実際に行ってみてどうでしたか?
まず自分の話をすると、今となっては全て大切な思い出ですが、ツラい時期はありました。言語を聞く力と話す力って伸び方が違うんですよね。特にスウェーデンでの生活を始めて半年くらいの頃は、聞き取れるようになってきたのに話す力がまだまだ追いつかず、おまけに冬の長い夜も相まって、明るい気分ではなかったです。
春が来る頃にはようやく少し話せるようになっていたり、自分らしい写真が分かってきていたり、自分を表現する方法が身につき始めて、そのあたりから毎日が楽しくなりました。
スウェーデンについてよかったなぁと思うのは、みんなとにかく自然が大好きなところです。いわゆる不良的な人も春先のお昼休みには日光浴をしていて、太陽が好きなのは人類共通なんだなと感じたことを強烈に覚えています(笑) 他にも、お互いの話を遮らずに聞くところや、「いいね」というニュアンスの相槌のバリエーションが多いところに、個人を尊重するような国民性を感じて素敵だなと思っていました。
ここに挙げたのは田舎にたかだか1年いただけの個人の感想なので、スウェーデンがこういう国なのか!と思われるのは少し危険ですが、行って嫌いになる人はいない国だと思います。より好きになったり、長く関わっていたいと思わせたり、いつか住みたいと夢見させたり、そういう不思議な魅力がある国だと思います。


留学から帰ってきて直面する大きな課題である卒論と進路選択についても是非お聞きしたいです。まず卒論に関して、どのゼミに所属し、どのようなテーマで卒論を書きましたか?
現代社会ゼミに所属し、卒論では北欧各国のデザイン政策を比較してまとめました。
「北欧デザイン」として少なくとも日本の市場では一つのトレンドになっていたのを北欧側はどう捉えているのか気になっていたことと、大学ではスウェーデンにこだわって(そして隣の専攻ではデンマークにこだわって)学んでいるのに世間ではスウェーデンデザインやデンマークデザインと呼ばれることはまだ少なく、「北欧デザイン」と十把一絡げにまとめられていることに違和感があったことから、このテーマに決めました。
ゼミ選択の際には、現代のトレンドに視点を置いて書くのか、北欧においてデザインが重要視されてきた経緯・背景に視点を置くのかで非常に迷い、当時社会ゼミの高橋先生と歴史ゼミの古谷先生にはたくさん相談しに行きました(その節はありがとうございました…!)。
どちらのゼミでも扱えることが分かりましたが、同じゼミ生が歴史の話をしているよりは現代社会の話をしている方が楽しそうだったのと、日本史・世界史が苦手科目だったので、現代社会ゼミを選びました。
北欧でまとめられることに対する違和感、とてもよく分かります。是非平田さんの卒論を読ませていただきたいです!(笑)では、卒業後の進路はどのように決めましたか?
スウェーデンや写真といった好きなものに特化した業界と、誰にでも必要なエネルギー業界とを見ていました。前者には残念ながら縁がなくげんなりしたこともありましたが、今の会社の採用担当の方々は素を引き出してくれて、それでも内定を頂けたので、結果的には納得しています。
就活の際、どのくらいスウェーデンにこだわりながら業界や職種を探されていましたか?
結構早々に諦めました(笑)
きっとみんながパッと思いつく企業は見てみましたが、日本法人化していて(それって結局スウェーデンとはどう関われるの…?)というのを当時は具体的にイメージできなくてやめました。もっと探せばあったかもしれませんが、あまり要領が良い方ではないので、スウェーデンではない路線に切り替えました。
心残りなくキレイさっぱりと…と言うと嘘ですが、仕事で関わる以外の道を見つけようかなと思い、結果としてスウェーデンアラムナイに参加させて頂きました。
中々自分の希望通りに行かないことも多い就活ですが、納得した内定をもらって就活を終えるためのアドバイスがあればお伺いしたいです。
難しい質問だと思いました。いわゆる就活論はみなさんたくさん情報収集してると思うので通り一遍のことを伝えても意味ないんだろうなぁ…と。また僕はあくまでも働かないと生きていけない人なので、「納得できるかできないかじゃなくて、納得するしかない」というスタンスなんですが、その前提で個人的に思うアドバイスを3点お伝えします。
1つ目は、内定時の納得感がゴールではないということです。内定時点で納得できても入社後に(なんか違うな…?)みたいなことはザラにあります。今後も悩むシーンは必ずあります。今の結果が全てではないので、納得できてなくても悲観的になりすぎる必要は無いと思います。大丈夫です、みなさんならちゃんと生きていけます。
それでも内定時の納得感がほしい方へ向けて2つ目のアドバイスは、ベストではなくベターで納得する方がいいということです。というかそもそも就活はベターで納得するゲームだと、振り返って思います。ベストの結果を得た人、ベストが何か分かっている人なんてほとんどいないんじゃないかな。無数にある選択肢の中から、少しでもマシな結果を得るように頑張るんです。軸とか自己分析とか言いますが、あれは要は納得できないラインを割りこむ企業をスクリーニングしましょうという話です。
3つ目に精神論だけでなく現実的なアドバイスをすると、考えすぎずに動いた方がいいです。先ほど言った通り、自分にとってベストって何?と突き詰めて考えるとドツボにハマります。それはもう哲学であり禅問答であり修行です。数ヶ月で答えなんか出ず、そして動けなくなってタイムリミットが来ます。ある程度の整理で動いてみて、内定が出たところからベターを取るんだと思います。実際働き始めて分かりましたが、仕事も同じでした。100点を出せるように死ぬほど考えてる人よりさっさと70点の整理をして上司なり同僚なりに相談しに行く人の方がうまくやれている印象です。就活はそれに気づくためのプロセスだったんじゃないかなと思っています。
社会人目線でのアドバイス、とても参考になります!ところで、具体的にはどのようなお仕事をされているのですか?
人事労務などを経て、現在は社有地開発の仕事をしています。ビルの建設プロジェクトを、いわゆるPMO(Project Management Office、プロジェクトマネジメントオフィス)というポジションでこれまでに2件担当しました。こういった仕事は数があるものではないうえに有期限なので、今後どうしていきたいかは考え中です。


社会人になった現在、スウェーデンとの関わりは何かありますか?
たとえば、プライベートでスウェーデンアラムナイという、大使館後援のスウェーデン留学経験者の団体で活動しています。スウェーデンの遊びをやってみたり、スウェーデン在住の方と話す機会を作ったりして、ネットワークを作ってます。これは宣伝ですが(笑)、メンバーは常に募集しているので、興味があれば関西支部のInstagramアカウント(@sweden_alumni_kansai)か会員メンバーにお声がけください。僕に連絡くれても大丈夫です(@taishohirata)。
その他にもスウェーデン語が話せることがきっかけで、フィンランドに友人ができ、年に数回は会ってその度に飲んだくれています。この前結婚式をしたのですが、フィンランドから駆けつけてくれました。
いつか仕事につながればなぁと夢は見ますが、接点は仕事だけではないですし、こうして今すでに人生に彩りを与えてくれていると実感しています。細くても長く関われることって幸せなことだと思います。



最後に在学生に向けてメッセージをお願いします。
1〜2年生に向けては、もし色んな条件が許すのであれば、スウェーデンには絶対に行った方が良いです。できれば留学など、長期で住んだ方が良いです。机上で学んでいるだけでは分からない魅力に溢れています。帰ってくるとスウェーデン関係の仕事をしたいというなかなか叶えるのが難しい夢を持ってしまうという点はありますが、それでもあの国での生活をしなかった人生は今では考えられません。
また3〜4年生など卒業を控えてる方に向けては、スウェーデンとは少し離れますが、、、学生生活の中でできた人間関係は大事にした方がいいです。社会人になると出会いが途端に公的な感じになるので、特に「親友」と呼べる人がいる人は、その関係は宝物だと思って大切に育てることをオススメします。